読んでいて生きる活力がもらえる「夫婦善哉」

書評

織田作之助さんの短編小説集「夫婦善哉」を読みました。日本の戦前と戦後の庶民の暮らしぶりが読んでいて浮かんでくる小説です。読んでいて思うのは、現代からしたらこんなにダラシがない男がいるのかというのが最初の印象です。夫婦善哉の柳吉もそうですし、その後に続く「アドバルーン」「競馬」に出てくる男たちのダラシがないこと。多分女性が読むとイライラするような気がします。女に博打、タバコ、酒、挙句の果てには薬に溺れていく彼らは本当にどうしようもない。それらのお金をまかなうために借金をしたりするのだから「救いがたいと人」というのはまさにこういう人らのことを言うんだろうなと思います。

現代の漫画でいうところの「闇金ウシジマくん」や「ナニワの金融道」に出てくるような人たちでしょうか。ところがこれらの漫画と違うのは読んでいてスッキリした感じがあるのが、この本の面白いところなんですね。

そこは織田作之助さんの書き方が上手いというところがあるんでしょう。例えば登場人物たちに色々と困難が押し寄せ、場面場面では自殺未遂を起こしたりするわけです。でも最後には生きる気力を取り戻し、なんだかんだで生きようと努力するわけです。この生きる気力を取り戻すメンタルは現代を生きる我々も見習わなければいけないなと思います。ところどころ出てくる当時の大阪駅やなんば駅周辺の描写は今とは比べ物にならないくらいみすぼらしかったと認識させられます。例えば大阪駅で冬場寒いため暖を取るために焚き火を行っている描写などがあるわけです。そんな時代に比べたら現代の我々はまだまだ生きる気力を失ってはいけないな~と思うわけです。

「なんか最近、モチベーションが上がらないな」とか「なんて自分はダメなんだろう」と悩んでいる方にはおすすめの本です。きっと読んでいて元気が出てきますよ。こんなダメな人間が生きていけるなら、頑張っている我々は絶対に生きていける! と思えますよ。

あと関西の人には特に読んでほしいですね。関西の地名がいっぱい出てくるので読んでいて「ああ~!」となると思います。

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